30代後半から孤独を強く感じるようになりました。会社を辞めて独立したことが原因だと思っていましたが、どうもそれだけではなかったようです。会社勤めのままでも同じように孤独を感じていたかもしれません。
私は家庭持ちで、「家には妻も子どももいるのに」と、当時は自分が孤独を感じていることに申し訳ないような、責めるような気持ちを持っていました。同じ孤独感でも、独り身の方のツラさはそれ以上だろうと思いますし。しかし、やはり感じるものは感じるのです。
当時はじわじわと内面がおかしくなっていく感覚に焦りながらも、なかなか解決に向かって動けずにいました。動こうにも、ものごとへの興味関心が薄くなっていくんです。また食欲もなくなり、外に出るのも億劫で、生活や仕事への影響が大きくなっていました。
2年ほど酷い状態が続きましたが、数年経った今はなんとか平穏な気持ちで過ごせています。
個人体験は一般化できるものではないかもしれませんが、同じように孤独感に悩まされている方の役に立つかもしれないと思い、当時の状況や考えていたこと、暮らしを立て直すためにやったことなどを書いてみたいと思います。
目次
“つながり”を維持するにはコストがかかる
先述したとおり、私が孤独を感じるようになったのは、会社を辞めて独立してからです。会社勤めのままだったらどうなっていたかはわかりません。でも他の方のSNSやブログを見ると(当時読みあさっていました)、会社員か否かにかかわらず、この年代で孤独を感じる人は多くいるようです。
私の場合は、基本ひとりで仕事をするようになり、人と接する機会が激減したことがきっかけです。独立はコロナ前でしたが、今なら会社にいてもリモートワーク中心になっているため、同じように感じている方もいるかもしれませんね。
会社を辞めて半年ほどは、それまでつながりがあった人たちと飲みに行くこともありました。ですが次第に疎遠になっていき、一年が過ぎるころには友人との予定がなにもない状態に。もともと「人とのつながりを維持しよう」「そのためにマメに連絡を取ろう」という意識が薄い人間なので、今まで他の人がやってくれていたのだなあと痛感しました。良い関係の維持には手間とコストをかけないといけないことが分かっていなかったんです。
自営業やフリーランスなど、ある程度スケジュールを自由に決められる場合、こちらから積極的に声がけをしたほうがいいと思います。「こっちはだいたいいつでもOKなんだから、向こうに空きが出たときに誘ってもらえるだろう」というのは間違いです。
友人たちもだんだん家族持ちが増え、会社が休みのときは家族の時間が必要で、何もなければいくらでもそちらの予定が入ります。相手に時間を取ってもらうために、定期的に会いたい意思を伝えておかなければ、どんどん優先順位が下がっていきます。そして疎遠になってしまうのです。この構造に30代も後半になってから気付くのはなんとも情けないのですが、実際に経験して深く理解できました。
育児きっかけで孤独になる
育児も孤独感を加速させる要因でした。私は育児の時間も取れると考え独立したのですが、本来なら独立後の事業に燃えているタイミングで仕事に専念できないもどかしさも感じていました。納得して選んだ道なのにわがままではあるのですが、前に進んでいる実感がないとやはり焦るのです。
当時は2人目の子どもが生まれる前だったため、つわりがひどい妻に代わって家事育児を優先していました(しっかりできていたかは分かりませんが)。新しいこと、仕事以外の趣味などを取り入れようにも、上の子どもがまだ小さいのでそちらにかかりっきりになり、自分のことは後回しになります。育児としては当然なのですが、社会から離れていく感覚は強くなっていきました。専業主婦(主夫)の方はもっと感じておられるかもしれません。当時、妻にも聞いてみましたが、わりと育児関係でママ友などとうまくコミュニケーションを取っていて、それほど感じなかったそうです(妻は専業主婦です)。この辺りは男女の差よりも、本人のキャラクターにもよるのかもしれません。
結局のところ、社会的な役割や期待に対するプレッシャー、また周りのみんなが会社や友人といった関係性を持っている中で、自分だけがどの輪にもいないという感覚が孤独感の正体であったと思います。「家族がいるのに」と思いますよね。でもどうしようもなく孤独を感じてしまうんです。
孤独から抜け出すための最初の一歩
当時はとにかく孤独感がつらく、仕事に集中しようにもできず、何をしてもどこに行っても孤独で気が狂いそうでした。だんだん食欲がなくなり、体重も減っていきました。診断には行っていませんが、抑鬱状態だったのではないかと思います。
少しマシになってきたのは、子どもが保育園に入園してからです。昼間の時間に余裕ができたことで、映画を観に行ったり図書館で過ごしてみたり、仕事以外で出かける用事を入れることができるようになりました。
ただ、平日昼間に会える友人はほぼおらず、やはり一人で行動する状況は変わりません。それでも、外を歩くだけでもいい気分転換になり、まともな生活への足がかりにはなっていたと思います。それまでは、SNSやゲームのチャットで人と話すのが唯一の楽しみみたいになっていましたから。ただ、これは孤独感を和らげる効果はあったのですが、他人の口論やトラブルもよく目にします。自分が巻き込まれることは少なかったものの、心が弱っているときに見るとげんなりするので、あまりいいものではないのかもしれません。
孤独感を解消するために試した趣味やアクティビティ
定期的に外に出るようになったことで、ある程度ひとりで行う仕事にも集中できるようになりました。食欲も戻り、傍目にはまともな生活になっていたと思います。ただ、冷静になって考えると、状況的にはそれほど変わっていないのです。仕事は一人だし、新しい友人が増えたわけでもありません。ふと気を緩めれば孤独感が襲ってきます。もう二度とあの苦しい状態に戻りたくないと、孤独から抜け出す方法を真剣に考えました。
解決策は、やはり人とのコミュニケーションを増やすことです。それには何かのコミュニティに属すことが必要だと思いました。とはいえ、仕事はそもそも人間関係が少ない職種で、ほとんど一人作業で完結してしまいます。それなら趣味の集まりで、となりますが、平日昼間に活動するとなると、どうしても定年後の方々など、年齢層が上の世代になります。世代の違いはほとんど気にしないほうですが、老人会のような場に入るのはさすがにまだ早いだろう……と、ハイキングや登山などのサークルは見送りました。テニス、野球、バレーボールなどのサークルは数多くあるのですが、あまり運動が得意ではないのでこれもパス。
と、あれこれ言い訳しながら探してみたのですが、ジモティーなどで地域検索すると出てくるサークルには、何らかの勧誘・ビジネスのにおいがするものもチラホラ……。見分けるのは一度参加してみればいいだけの話なのですが、「絶対にその活動がやりたい」と探しているわけではないので、いまひとつ気持ちがアガりません。それなら最初からお金を払って行くほうが気が楽だと、結局社会人向けスクールに通うことにしました。選んだのはビジネス系の資格取得講座です。
結果として、これは手段としてはなんともいえない「△」といったところでした。曜日クラスが決まっていて同じメンバーで受講するのはよかったのですが、基本的には座学なのでコミュニケーションがあまりないんです。会社のお金、研修で来ている方も多く、みんな仕事に活かすために来ているので仕事の関係と変わらない。ディスカッションなども行うタイプの講座でしたが、プライベートでの友人関係にまでは至りませんでした。
ビジネス講座の受講は、「どうせやるなら、仕事でも役に立つものを」と考えてしまったのが失敗だったと思います。孤独感解消のためなのですから、一石二鳥を狙って欲張ってはいけなかったのです。
それでも、この期間の勉強習慣が、規律のある生活や集中力を取り戻す要因になったのは間違いないです。週に一度きちんと準備をして「学校に通う」という行動が、その後の行動意欲につながっていきました。その意味では、スクール通いの価値はありました。オンライン講座だと難しかっただろうと思います。
最終的に孤独から抜け出した新しい居場所
コミュニケーションや友達づくりとしてはうまくいかなかったビジネス系講座ですが、目標を持って習慣に落とし込んだことで、生活にハリが出ました。外に出て人と関わる感覚も取り戻したので、次は孤独感解消という目的をはっきり持って手段を探しました。
そして最終的に私が選び、実際に孤独感の解消に成功したのは、ワイン講座の受講でした。ソムリエ資格を目指す講座ではなく、幅広くワインの知識を得るための初心者向け講座です。
まず、ワイン講座のよかった点をあげます。
ワイン講座受講のメリット
- 参加者の年齢・性別がバラバラで、若い方も年配者もいる
- テイスティングがあるのでコミュニケーションを取りやすい
- 趣味の集まりだけど完全に遊びでもなく、みんな意欲的
- テーマがお酒なので、講座修了後も飲み会(ワイン会)で関係が続きやすい
- ワインは知識があるとより美味しく楽しく飲める
デメリットも考えたのですが、特に思いつきません。お金がかかることくらいでしょうか。当たり前ですけども。でも講座で飲むワイン代込みと考えると安いと思います。
私が通ったワインスクールはアカデミー・デュ・ヴァンです。東京大阪名古屋などの大都市圏にしかないですが、一定の人口がいる都市であれば、同じようなワインスクールはあると思います。
【アカデミー・デュ・ヴァン】
いろんなコースがありますが、友達づくり・コミュニティづくりなら初心者向けの「ワイン総合コース Step1」がいいと思います。何人かはそのまま上級や資格対策コースまで受講されます。それくらいハマるし、楽しいです。
受講開始時にワインの知識はなくて大丈夫です。逆に受講中や、講座を受けて詳しくなっても、周りに知識をひけらかさないことのほうが重要です。「ワインの知識でマウントを取られた」などの話を聞くことがありますが、スクールに参加されるような方同士では基本的にはありません。ワインのたしなみ方もマナーとしてしっかり身に付けるので。
私はもともとワイン好きでずっと飲んでいましたが、むしろ先に講座を受けてからいろいろ買って飲んだほうがよかったなと思いました。ワインは体系立てた知識があるほうが楽しいです。
受講中や修了後もワイン会は頻繁にあります。講座で知り合った方だけでなく、ワイン好きはどんどんつながっていくので、スクール卒業生以外にも関係が広がっていきます。ワイン会って集まる理由を考えなくていいので、開催しやすいし誘いやすいんですよ。だってみんなワインが好きで、いろんなワインを飲みたいから笑。人数がいたほうが、一度にたくさんの種類を比較飲みできるので、集まるモチベーションになるんです。今では2週間〜1ヶ月に一度くらいのペースで、なんらかのワイン会に参加しています。ワイン仲間ができたことで、気がつくと孤独感はなくなっていました。
あくまで私の例ではありますが、本当にツラかった孤独を解消してくれたワイン友達、きっかけとなったワイン講座には感謝しています。誰もがこれでうまくいくとは言いませんが、メリットとしてあげたように「ワイン(=お酒)」という媒介があることで、ほかの趣味よりコミュニティを維持しやすいように思います。もし同じような孤独を抱えていらっしゃたらぜひ行ってみてください。無料体験もあります。同じツラさを味わった身として、早く孤独から抜け出せるよう祈っています。